協力よろしく「あいつヤバッ、ぜってぇナイフ隠し持ってるよ。」
一人の弱々しいおじいさんを見て、恭平は警戒気味につぶやいた。
学校が終わると家の前の公園で人間観察をするのが恭平の日課だった。
自分が一危ないヤツだということは、高校生の恭平には、知るよしもなかった。
幼稚園位の男の子と女の子が二人で遊んでいる光景を見て「あいつらぜってぇやってるな、怖い、怖い」とつぶやいた時
「おーい恭平ッ!」と後ろから声が聞こえた。
ボロボロの一輪車に乗った純平だった。
純平「あぶねぇ目つきで幼稚園児を見つめんなよ、怖いわ」
恭平「お前に言われたくねぇよ、制服で一輪車…」
恭平はこらえた。純平の家の経済状態を知っているからだ。八つ子のうち二人を恭平の家が引き取るという話もあったくらいだ。
純平が乗ってる一輪車は弟達が純平の就職が決まったお祝いに作ってくれた大事な代物だった。
二人はブランコに乗って夕日を見ていた。
純平「あのさあ…おまえ卒業したらどーすんのべ?」
恭平「いや使い方間違ってるけど…一応大学決まってるけど、なんかなあ…」
純平「そーだよなあ、大学生ってバカッぽいもんな」
恭平「いやいや、サーカスよりまとも…」恭平は、ほぼ言ってしまったが、ギリこらえたつもりでいた。
純平「俺、子供好きな人じゃん?だから子供達に夢を与えるサーカスって自分にあってると思うんだ。想像してみろよ、俺がサーカスの人気者になって子供達を楽しませてる絵を」
恭平には、檻の中に入れられた、変なアザのある全裸の純平が体育座りで泣いている絵しか浮かばなかった。
恭平「サーカスって給料いいの?」
純平「なんか危険手当てとかついて、あとなんか税金とか引かれて、手取りで月4万位らしいよ、三食付いてるし、セレブじゃねぇ?」
恭平「危険手当てついて4万っ!?俺のコンビニのバイトの半分じゃん!だまされてねぇ?おまえ」
純平「なになに、ジェラシー?先に社会に出ちゃって、わーるいね」
恭平は純平の事がかわいそうになり、満面の笑みで純平に言った。
恭平「さあ、暗くなってきたし、うちでメシでも食うべ!今日は食パンと、しじみの味噌汁だぜ!ヒューヒュー、しかーもデザートは生ハムプリンだぜぃ!」
純平「おーっ食パン、食パンっ」
恭平は悲しみを隠すため、わけのわからないテンションで純平を家へ連れていった。
純平「ちょっと待って、チャリのカギ無くした。」
恭平「一輪車にカギなんかつけんなやぁ、簡単に盗めるぜ、おばかちゃん」
純平「それもそうだなあ、ハハハ」
一月の寒い日だったが二人の心の中はポカポカだった。